答えにくい質問への答え方 米国編?

“His answer was perfect.”(彼の答えは完璧だった)というキャプションにつられて、米国のベト・オルーク下院議員候補のスピーチに見入ってしまった(2018年8月22日ツイッター)。

FireShot Capture 1
https://twitter.com/nowthisnews/status/1032017750829531142

ことの発端は、アメリカンフットボール選手が2016年頃から、国歌斉唱の際に起立せず、ひざまずいて差別に抗議する行為。これは国家に対してdisrespectful(失礼、罰当たり)という議論がアメリカを二分していた。

ここでは議論の内容には触れないが、公開討論会だろうか、不満をあらわにした質問者から「あなたはこの行為についてどう思うか?」という質問にどう回答していたかを、普段の会見トレーニングなどと比較してみたい。(※個人的な見解です)

  • 質問者に感謝する

日本では「ご質問ありがとうございます」は切迫した場面では言わないもの。英語圏では、”Thank you for your question.” は比較的よく聞くフレーズで、今回も繰り返し使っている。

  • YES/NOの質問に明確に答える

日本では、記者が白黒つけたいための質問をすることがある。「したんですか、しないんですか」「~~したということでいいですよね」

オルーク議員は早い段階で、”My short answer is no, I don’t think it’s disrespectful.”(端的にはノー、私はそれを失礼な行為だと思わない)と伝えている。まず結論から言う英語らしい構成だが、NOと伝えたところであいまいな回答は許されなくなり、納得いく説明が求められる。

  • 聴衆を味方につける

後半が政治家らしさを見せているが、NOの理由を、アメリカの歴史になぞらえて答えている。キング牧師やローザ・パークスが非暴力で公民権運動を展開したことを例に出し、国に忠誠を誓っているのは制服の高官だけではない、自由や権利を求めて非暴力な形で表現する一般の人たちもいる、と続ける。政治家を含めて、権力を守るべき立場にある人たちがそれを忘れないように、彼らはひざまずいて示してくれている、と締めくくる。テキサスという土地柄もあり、アメリカ南部の話題は自分事に引き寄せる材料でもある。

「質問者のような考えの方も、私のような考えの方もいるのが、分別あるアメリカだ」と反対意見をフォローをすることも忘れない。

賛成・反対にかかわらず聴衆の共通項を見つけ、瞬時に提示する。日本では類似の場面が思い浮かばなかったが、NOの意見をつらつらと述べたのであれば紛糾したであろう場を、一つにまとめた力強いスピーチ。オルーク候補が即興力に優れていることは間違いない。

 

JT

 

 

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。