11月3日、ブルーインパルスのアクロバット飛行を見てきました。ブルーインパルスは航空自衛隊が存在を知ってもらうためのアクロバット飛行チームで、日本各地のイベントなどに参加してPR活動を行っています。
東日本大震災では、ブルーインパルスの本拠地である宮城県の松島基地が水没、壊滅的な被害をうけました。震災から5ヵ月がたったある日、青森県の三沢基地から6機のブルーインパルスが東松原市上空へ姿を表すと、集まった人たちは空を見上げ大歓声、子どもたちからは笑顔がはじけ、その様子は多くのニュース報道に映し出されました。その時、ブルーインパルスは被災した皆さんを励ます復興の象徴そのものだったのです。
文化の日の航空祭には19万人が集まりました。望遠レンズを構え、スマホを構えた飛行機ファンが大半のようですが、なかには、ブルーインパルスに勇気をもらった被災者のように、それぞれが抱える悩みや困難に立ち向かう力を求めて集まっている人も多いのではないかと感じました。なぜなら、イベント終了後も多くの人が飛行場に残り、基地に帰るブルーインパルスを見送ったのです。その様には別れを惜しみ、立ち去りがたい想いがあふれていました。当日はブルーインパルスのほか、大きなヘリや飛行機など航空自衛隊所属の機体がたくさん集まっており、夕闇せまるなか一機、また一機と基地へ帰っていきます。轟音をとどろかせ飛び立った機体は、ゆっくりと機体を傾けるのです。それは、機体からのありがとう、さようなら、の合図だそうです。人間と機体を越えるつながりが感じられる瞬間でした。
4年前の5月のひどく蒸し暑い日、国立競技場のお別れイベントでブルーインパルスがアクロバット飛行を披露しました。50年前の東京オリンピック開会式で飛行した縁だったようですが、航空自衛隊の粋な計らいに感動しました。青と白の機体は、その形からプラモデルのようにも見えますが、機体同士の距離が保たれ、白いスモークが残す軌跡は、大変美しく精密で、高度なフライト技術をあらわしています。渋谷のスクランブル交差点、六本木ヒルズ、新宿のビル街でも目撃情報が相次ぎ、多くの人をとりこにしました。
航空自衛隊をとりあげた「空とぶ広報室」はテレビドラマとして有名ですが、原作は有川浩さんの同名の小説です。「航空自衛隊を題材にした小説を書きませんか」とメールをもらったことが執筆のきっかけだったと、「広報会議(2012年11月号)」でご本人が語っています。自衛隊をよく理解してほしい、という担当者のあつい想いが積極的な行動につながったのだと想像します。有川さんは同記事の中で「ある物事を知ってもらうための仕事という意味では、作家と広報の仕事は似ていると思います」と語っています。確かに、何を伝えたいか、どう理解して欲しいかに強い想いをもち、伝える方法を考え続ける作業は作家と広報に通じるものであるのかも知れません。
2020東京オリンピック開催にあたり、もし、東京の空にブルーインパルスが飛来することがあったら、ぜひ、立ち止まって空を見上げてくださいね。
mo