「読んでから観るか、観てから読むか」
というのは、昔、角川映画がメディアミックスで使っていたキャッチコピーですが、今月の3日から公開されたスターサンズ/KADOKAWA配給の映画『MOTHER』(大森立嗣監督)は、観る前でも観た後でも読んでほしい本と聴いてほしい楽曲がある映画です。
「すべてを狂わせた彼の母親は、怪物(モンスター)? それとも聖母(マリア)だったか——。」というコピーがついているこの作品は、主演の長澤まさみさんの怪演が話題です。そして映画はフィクションですが、実際の事件をベースにしています。
2014年に発生した、少年による祖父母殺害事件。
覚えている方も多いかもしれません。
『誰もボクを見ていない』(山寺 香著)として一冊にまとめられているので、映画を観る前でも観た後でもぜひ読んでほしいです。あまりに酷い養育環境に読み進めるのが辛くなるのですが…。
子どもの虐待死のニュースを聞くと、毎回どこかで助けられなかったのか、と考えてしまいます。この事件は虐待された子どもが加害者となってしまったケースですが、やはりどうして止められなかったのか、助けられなかったのだろうとモヤモヤとしました。
子どもが亡くなった場合も、加害者となった場合も、共通するのは、何度か救うチャンスがあったのに親が支援を拒否してしまっていること。
なんで??!!!と思ってしまいますが、助けを求められるというのは、安心して頼れる環境があってのこと。
それまでの環境から助けを求められない人がいることは『「助けて」が言えない』(松本俊彦編)に詳しく解説されています。

現在服役中の少年(成人しているから元・少年?)は、昨年『存在証明』という歌を作詞しました。
ずっと誰からも見られていないと感じていた少年が
今もどこかにいるかもしれない、自分と同じような子どもに向けて「君が生きてる意味はあるんだよ」と語りかける歌。
もし、身近で似たような境遇の親子がいたら、何ができるだろうか?
映画を観る前でも、観た後でも、読んで聴いて知ってほしいです。
江良洋子