まっすぐ前を向いて

「へでもねえや」「ゼッテー(絶対)大丈夫だからな」

最近、マンガ「ブルージャイアント」と出会い、ページをめくるたびに主人公のセリフに勇気づけられています。

高校生の宮本大は友人を介して偶然、ジャズと出会い、サックスを手にします。来る日も来る日も一人、川原で練習を重ね、「世界一のジャズプレイヤーになる」目標にひた走っていきます。

ジャズ喫茶、ジャズバーと言うとお洒落なイメージを想像される方も多いでしょう。

しかし本作を形容するならば、「熱っぽい」「青春」といった言葉が当てはまります。

大きな夢を抱いた男子高校生が、血のにじむ努力を重ねる姿、ときに心のままに音楽を愛する天真爛漫さが、何だか羨ましくも思えています。

先日、印象的なシーンに出会いました。

大は大晦日の夜、強い雪が降る中でも、川原で1人サックスの練習を続けます。寒さと思うように吹けず、心が折れそうになったとき、1匹の猫が現れ、大を見つめます。猫はそのまま立ち去りますが、暗闇に猫が残した真一門字の足跡を見て、大は思います。

「まっすぐ前を向いて行こう」

新型コロナウイルスの流行で世界は変わってしまい、先の見えない不安に襲われることが、私自身、これまで何度もありました。

自分のせいで友人や家族が発症したら。実家の両親や祖父母に万一のことが起きてしまったら。

時々、杞憂とは言い切れない不安が心を覆い、自分の行いに自信が無くなったこともありました。

そんな昨年冬、偶然にも本作と出会い、前を向いて生きることの尊さに気付かされた気がします。

大のように、「世界一」の夢を掲げることは簡単ではありません。

私はまず、今いる友人や家族、環境に感謝し、顔を上げて日々を過ごすことから始めようと、本作を読みながら2021年の幕開けに決めました。

東日本大震災後の仙台が本作の舞台です。まもなく3・11から10年。この間、想像し難い天災や環境の激変がありました。

次の10年は、一人でも悩み苦しむ人々が、前を向くことができる10年であって欲しいと願います。

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