写真は日刊スポーツより引用
女性をめぐる発言内容について謝罪・釈明した東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長の記者会見が、大きな批判を浴びています。コロナ禍で五輪・パラリンピック開催の是非を迫られる組織委員会にとって今回の一件は、今夏開催の機運を一層低下させるきっかけになるかもしれません。
最近は注目の謝罪会見がネットで生中継され、各メディアのサイトで会見の発言全文も掲載されるようになりました。エイレックスでも大変助かっています。会見者がどんなメッセージを発するかは最も重要ですが、忘れてはいけないのが、同じ趣旨の質問でも、記者がどんな言葉で質問するかによって会見者の答えも変化し、思わぬ失言にもつながり得るということです。
不祥事の会見では、記者側も限られた時間で新たな事実や会見者の本音を引き出そうと努めます。行儀よく丁寧に質問しても事前に用意された話しか出てこないとあれば、あえて自分の意見を厳しくぶつけてみたり、感情的になって聞いてみたり、冷たく鋭い言葉を投げたり…。記者それぞれテクニックは異なりますが、相手の心を揺さぶりにかかるのです。
昨日の森会長の会見でも、そんな質問がいくつもありました。
(記者: 今回の発言を受けて、国内外の様々なメディアから批判。辞任は浮かんだか?)
(記者:会長は、「国民から理解を得られる大会の開催を」と、ずっとおっしゃってきた。だが、オリンピックの理念に反する発言だったと思う。ご自身が責任を取らないことが開催への批判を強めないか?)
総理大臣経験者でもある森会長に配慮して直接的な物言いは避けていますが、要は「あなた辞任しないの?(辞任すべきでは?)」といわんばかり。記者の意図がしっかりと透けて見えます。
会長が記者に逆質問した以下の一幕は、少なからず会長の平常心が揺らいだと考えました。
(記者: オリンピック精神に反するという話もされたが、そういう方が組織委員会の会長であるのは適任なのか?)
森会長:あなたはどう思いますか
(記者:私は適任ではないと思う)
森会長:じゃあ、そういう風に承っておきます
ほかにも、
(記者:組織としての場じゃないから、あの発言は良かったと?)
(記者:「わきまえる」という表現を使われていたが、女性は発言を控える立場だと?)
など、あえて質問者の思いを含めて認識を問いただしています。「売り言葉に買い言葉」「質問に対する不満の吐露」など、失言の火種となった場面もありました。
今回の「炎上」は、森会長の立ち居振る舞い、発言内容が招いた結果ではありますが、どうしてその発言に至ったのかは、危機管理広報に関わる一人として学びになっています。
M.N