広報界隈にも押し寄せるサステナビリティの大波

広報の仕事は、経営の方向性と一致している──。当たり前かもしれないことを最近つくづく感じます。危機管理方面の仕事の量と幅が広がっているのは過去10年の大きな流れですが、昨年後半からは、ESG、SDGs関連の広報ニーズがエイレックスでも増えています。

10年ほど前、大学4年生と雑談をしていて「社会的企業、社会起業家に関心があります」という話を聞いたとき、「うーん、エイレックスや当社のお客様企業とは少し距離があるかなぁ」などと感じてしまった覚えがあります。

しかし、今や多くの普通の企業が「社会的企業」の定義である「環境、福祉、医療、人権、教育などの社会的課題に対して、慈善活動やボランティアではなく、ビジネスで取り組み、解決を目指す」ことを実行中です。

サステナビリティに関心のある就活生は、ぜひ広報会社に(なかでもエイレックスに)ぜひアプライしてみてください。

ところで、すっかり経営の本流になった感のあるESG、SDGs、サステナビリティ経営に関連して、その広報活動でいくつか気になる点があります。

ひとつは、目標年が非常に遠いこと。日本政府がカーボンニュートラル(二酸化炭素ネット排出量ゼロ)を打ち出しましたが、その目標年は2050年。今年の新入社員が52歳になる年です。

企業もそれに合わせるように2040年や2050年の超長期の環境関連目標を広報し始めていますが、そこに「事実性」や「確からしさ」がどの程度含まれているのか。また、これはだれがだれに約束している目標なのか。いろいろ質問してみたくなります。

二つ目は、メディアの側で、まだニュースバリューを判断する軸が定まっていないように見えること。そのため、大きく報道されて、大ニュースなのかと思って読み進めると、中身はスカという話が結構あります。

これら2つの点が組み合わさると、たとえば、実質的な環境貢献がない策でも「再生エネ」「脱炭素」などの装いで有名企業が広報すると、経済紙が大きく報道する、ということが起き得てしまいます。

大きな報道を獲得することは、広報した企業にとっても、書いた記者にとってもハッピーで、一見ウィンウィンに見えます。しかし、これではその道の専門家には評価されませんし、広報活動そのものの価値や信頼感を低下させかねません。

広報活動は英語で spin(情報操作)と呼ばれることがあります。メディアの側の知識不足や判断軸の混乱の隙をついて、実態のないものを、もっともらしく装って広報し、大きく報道させようと試みるのは明らかに spin です。

ESG経営をリードし、ESGの優等生と投資家から見られてきた仏食品大手ダノンのCEOが3月、モノをいう株主の声に押され、解任されてしまいました。

長期目線のESGの点数では勝っていたとしても、短期目線の収益性で他社に見劣りしていては、その経営方針は長期の持続にはたえられない、という事実を突き付けられ、ショッキングでした。

スピンして、一見価値があるかのように伝え、いっとき世の中から評価されたとしても、まもなくメディアや世の中の消費者・生活者・投資家らの目が肥えた時点で化けの皮がはがれてしまうようでは、その施策にせよ、広報姿勢にせよ、まったくサステナブルではありません。

ESG、SDGs、サステナビリティ経営にふさわしいコミュニケーションの姿勢・方法論が、広報会社にも問われています。

H.H.

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