「てまえどり」という名前のヒヨコやニワトリ、カモメなどがポップになってスーパーやコンビニに進出していることをご存じでしょうか。
この「てまえどり」、棚に並んだ商品を手前からとってね、と環境省と農林水産省が食品ロス削減を目的に呼び掛けているものです。「てまえどり」を目にしてもふむふむと感じる程度だったのですが、栄養学博士による食品ロスに関するセミナーに参加したことで、大きく意識を変えるきっかけにつながりました。

食品ロスというと、恵方巻やクリスマスケーキなどの季節商品の廃棄や、東京オリンピックでのお弁当の大量廃棄などのニュースが印象深いでしょうか。日本における食品ロスは日常的に家庭から出されるロスと、メーカーや小売店などの事業者からのロスに大きく2分され、その総量は年間520万トンを超えています。520万トンは、国連が1年間に実施する世界の食料援助量に匹敵します。すごい量だな、と感じるかもしれないですが、一人がお茶碗一杯ほどのロスを毎日出すと年間で40キロ、国全体では520万トンを超えることになります。
食品ロスは、本来食べられる食料が廃棄されている課題であると同時に、大きな経済的損失であり、ごみ問題、ごみ処理のエネルギーと二酸化炭素排出問題であり、つまりは地球温暖化に関わる大きな課題です。事業者からの廃棄物は賞味期限と消費期限の表示方法や、在庫を持ちすぎないようにする独特なルール、欠品を嫌うなど我が国ならではの慣習や法律も影響しています。企業の防災備蓄品も廃棄されることが多く、再利用が求められています。京都市は観光地でありながらごみ量を減らしているなど自治体や行政レベルでの取り組みも進んでいますが、個人でできることはないでしょうか。
自宅近くに、週に4日ほどお昼ごろ開店、閉店も早いケーキ屋があります。毎日やってくれないかなと感じていましたが、開店を待ち構えるお客さんも多く売上も高そうです。人気の品はどんどん売り切れるのでロスも少ないのかも知れません。従業員さんもきちんと休暇を取れて働きやすさも確保されていそうです。もっと遅くまでやってくれないかと思っていた私も、自然と開店日に買いに行くことが当たり前になり、お目当てのものが売り切れであっても、売れてよかったと感じたりと、おおらかな気もちが芽生えています。
食品ロスに関心をもって調べるなど物事の背景を知ると気持ちも変わってきますね。必要以上に期限にとらわれず、棚の手前からとる、規格外の野菜や果物を積極的に購入する、ゴミ燃焼にかかるエネルギーを減らすためにゴミを減らす…私個人にできることはささやかですが、何事にも関心を持ちつつ次代のことを考え、持続可能な社会へと心掛けていきたいと感じています。 m